「そういえば、お祖父さま。


飛涼殿で殿上人たちが噂しているのを小耳に挟んだのですが。



太宰府のあたりで、なにやら不穏な動きがあったそうですね」






「あぁ、もうお耳に入りましたか。


いつものことながら、たいそうお敏いことです」






「ははは、そんなに褒められても、何も出ませんよ」






「ご冗談がお上手でいらっしゃる。



いえ、私も詳しくは知らないのですがね。


どうやら、大陸の方からの難破船が着いたんだそうですが、その船に、兵士たちが大勢乗っていたというのです」






兼正の言葉に、奥津宮の目がすうっと細まった。






「………ほぅ、兵士が?


それはつまり、唐が我が国を攻撃しようとしていたということですか」






「いえ、それは分かりません。


なんせ、生き残った者はいなかったそうですから」






「なるほど………」