「あーあ。言わずに済まそうと思ってたのにな」

あははと苦笑している。

何が可笑しいのよ、この馬鹿。


「確かにその通り。美玲の言った通りだ」

次の瞬間、真剣な目をした。




「俺は美玲のことは好きじゃない」



「……っ」


だ…め。

駄目よ、あたし。

泣くのは、後で。


強く拳を握る。


泣かない、泣かないの。

そう言い聞かせながらも、自然と顔は俯いてしまう。

俯いた顔に伝った雫は、濡れた髪から落ちてきた雨粒か、涙か。

大丈夫よ。そうでしょう?だから泣かないで。

長い人生、人に嫌われることだってあるわ。それが雅人だっただけのこと。

ただそれだけのこと。

それだけのこと、なのに…


胸に広がる、果てしない絶望感と孤独感。



「だって俺、美玲のことが"大好き"だから」

「は…?」

思考がついてこない。

何を、言ってんのよ…

「だーかーらー、"好き"じゃ足りねーくらい、大好きなんだってば!もー、恥ずかしいこと言わせんな!」

本当に恥ずかしそうな顔をする雅人。