ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】

「"木星よ、我に力を"––––！」

言葉が聞こえたかと思ったら、屋上ごと、薄緑の幕で覆われていた。

どうやら雅人が大きなシールドを展開して、屋根のように雨を防いでいるらしい。

魔法って便利だなと改めて思う。

おまけにシールド内が暖かくなるように計算して魔法をかけているから、驚きだ。いつもは馬鹿なくせに。


「どうしてここにいるのって、そんなのあたしの勝手よ！雅人には関係のないことでしょう？」

雨に打たれていたせいで、髪の毛が顔にへばりついて、泣きそうな顔を隠してはくれない。


あぁ、どうしても語勢が強くなってしまう。怒ってるわけじゃないのに。


「関係あるに決まってんだろ！」

嘘つき。自分だってさっき、あたしのことは関係ないって言ってたくせに。

雅人は自分が着ていたブレザーをあたしにかけてくれた。

「え…」

「風邪引くだろ」

「ど、どうして…どうして、こんなところにいるのよ…！」

「いつまでたっても美玲が来ねーし、他の奴に聞いたら走って屋上へ続く階段の方に向かったって聞いたし、もしかしてと思って来た」

真っ直ぐな目があたしを捉えて離さない。

「なんで…」

何でそんなこと言うのよ。あたしのことなんて嫌いなのに。


「何でって、お前な！自分の彼女が冷たい雨に自分から打たれていたら、そりゃ心配するだろうが！」

分からないよ、その言葉が本当なのか嘘なのか。

あたしにはもう、

「分かんないよ…」

気がつけば心の声が口を飛び出していた。


あたしのことが嫌いなら、なんでそんな心配をするの？

浮気相手が…他に好きな人がいるのなら、どうしてあたしの心配をするの？

好きでもない人のために、どうして、今ここにいるの…

「どうして…」