あの日、確か俺が幼稚園に通っていた頃だと思うが、公園で同い年くらいの女の子を見つけた。

可愛くて綺麗で、優しさが漂い、でも凛としていて…だけど直ぐに消えてしまいそうに思えるほど儚くて。なぜか放っておけないって、目を離してはいけないって思ってしまった。


その子の圧倒的な魔力は、群を抜いていた。幼い子供であるものの、大人だって負かすほどの強大な魔力。だけどなぜかそれはとても心地よくて、忘れられなかった。


『またあそぼうね』

と手を振りあったまま、二度と会うこともなく、それからずっと探し続けていた。


そしてこの学園で由良と出会って、あの時の女の子が由良なんだと確信した。


ということは、俺は由良に10年以上も恋していることになる。

本当に一途だな、と自分でも笑える。


「…本当に会いに行かないつもりなのか?」

雅人がいつになく真面目な顔で、遠慮がちに聞いてきた。

「…あぁ」

それは、当然だろう。


「俺の弱さが、サファイアに付け入る隙を与えてしまった。それであいつは…記憶も、魔力も失ってしまったんだ。俺が由良を傷つけたも同じだ。俺が由良を傷つけた。

だから俺は…由良と会うことは、できない」


"ガーネット"と"サファイア"の一件があってから、一週間後。

俺は、病院のベッドの上で目を覚ました。


目をあけたものの、目の前に広がるのは白っぽい天上だけ。

全く自分のおかれている環境とこの状況が呑み込めず呆然としていると、俺の傍には姉さんと雅人、そして美玲の姿があることに気づく。

『翔太!』

皆、今にも泣きそうな、嬉しそうな顔をしている。


『……こ…こは…』

『病院よ!』

美玲の声がして、美玲もいることが分かった。

って、病院?