あーもう、女々しいな、俺。

どうにも制御できない自分の感情にイライラしつつ教室のドアを開けた。


「あ、モテ男!」

教室に入った瞬間、聞こえてきたのがこれ。

ていうか、お前は俺の状態知ってるよな?知ってて、そんなこと言うわけ?


いや、決して八つ当たりではない。

ただ単にムカつくだけだ。


「…黙れ雅人」


これ以上言うなら…と不敵に笑うと、


「はいすいません黙ります!」

早速白旗降って降参してきた。


「しっかし、お前はモテるなー。由良がいなくなってからますますだな?」

よっこの色男!なんて言ってくる雅人は、もう無視だ。面倒くさい。


でも確かに、由良がいなくなった高校2年生の3学期から、告白される回数は飛び跳ねるように増加している。

おかげで、ただでさえ少ない俺の休憩時間がめっきり減っている。


「まあまあ。みーんな、由良がいなくなったから翔太を狙えるって思ったんじゃねーの?チャンス到来って感じで」


客観的に見ても由良は学園1可愛くて清楚で誰にでも優しい生徒だった。先生生徒問わず本当によくモテていた。

だから、由良がいなくなってそう思う女子がいたって仕方ない。当たり前だ。普通、だよな。


だけど、

「俺には由良しかいないっつーの」


そう呟く俺に雅人は笑いかけた。


「まさかお前が恋する日が訪れるとはな。奇跡だな」

「…」


…そうでも、ないかもしれない。

俺はかなり長い間一途に恋してると思う。