あたしが生きていることを、こんなにも喜んでくれる。

そんな人が家族以外にいるなんて、学園に行く前のあたしは想像しなかっただろう。

今でも信じられないよ。

だけどそれよりずっと、嬉しい気持ちの方が大きくて。


あたしはぎゅっと翔太にしがみついた。


「…翔太を残して、死ねないもん」


あたしは呟いた。


「決めたの、あの日から」


あたしがまだ学園にいたころ。

翔太がお祖母さんを亡くした、あの日。

あの日からずっと、あたしは。


「翔太に悲しい顔なんて、2度とさせないって」


今でも鮮明に思い出せる。

傷ついて、溜息ばかりついていた、あの頃の翔太の顔。


「あたしが死んだら、きっと、翔太は悲しむでしょ?」


それは願望ではなくて、事実だ。

だって、あたしは、こんなに。

こんなに。


「翔太に、好きになってもらったから」


あたしがそう言うと、翔太に「バカ」と怒られた。

ギュッと強くなる翔太の腕。


「本当に、本当に馬鹿だな、お前は」


すると温もりが離れた。

翔太が呆れたように、あたしを見た。


「俺がお前のことを好いてると思ってんの?」


羞恥心の波に呑まれながら、遠慮がちに頷いた。

何これ、今までのどの質問より恥ずかしい。

顔が真っ赤になるのが分かる。

けれど翔太の顔は深刻な顔をしていた。


「言っておくけど、俺はお前のこと、好きなんかじゃない」


グサリと、火照っていた心に氷の矢が刺さる。

目の前に広がる絶望。

目に見えるもの全てが色を失っていくような感覚に陥る。