目を開ければ、そこは競技場のフィールド内だった。

「まずは誰から戦うんだ?」

雅人がワクワクしている顔でそう言った。

目が輝いている。

「え、本当に戦うの?」

あたしがそう尋ねると、

「ここまで来て何を言ってるのよ。戦うに決まってるでしょ?」

美玲はさも当然とでもいうような表情をしている。

「決めるの面倒くさいし、待っている時間が暇だから皆で戦おう」

翔太がいつにもなく嬉しそうな顔でそう言った。

「いいわね、それ!」

「そうしよう!」

ワイワイと話が進んでいく。

ぽつんと置いてきぼりなあたし。


ていうか、皆さん本当にそんなにストレス溜まってんの?

そんな風にはぜんっぜん見えなかったんですけど!


「じゃあ、決まりな! 由良もいいだろ?」

「へ?」

雅人に話しかけられてハッと我に返る。

「聞いてなかったのか?」

頷くと、翔太が溜息をついた。

「まったく、この馬鹿が」

「た、ただ話を聞いてなかっただけで、馬鹿って言わないでくれる!?」

ギッと睨みつける。

全くこいつは…喧嘩売ってんの!?

それなら望むところだよ! 喧嘩、買ってあげようじゃない!

「聞いていないなんて馬鹿としか言いようがないだろうが」

「それは翔太のボキャブラリーが少ないせいでしょ! もっと他に言葉はあるから!」

すると翔太は笑った。

人を小馬鹿にする、あの笑顔だった。

「へぇ。今の由良を表す言葉が、馬鹿以外にどんな言葉があるのか知りたいとこだな。例えば、阿呆とか? マヌケとか? ドジとか? まだあるか?」

「ひっどい!」

翔太の方が、阿呆でマヌケでドジじゃない!