「あ、そうだ」

ぱん、と手を叩いて美玲が微笑んだ。

「今から、競技場に行かない?」

「競技場?」

首を傾げていると、翔太が笑った。

「いいな、久々に楽しそうだ」

「っていうか、今から行くのかよ? そんなこと突然言われても、使用許可状取ってないじゃん! 勝手に使って怒られても、俺、知らねぇよ?」

俺知らねぇよ、と連呼している雅人。

美玲が眉間にしわを寄せて、黙って雅人、と一括すれば大人しくなった。

やっぱり雅人は美玲に勝てないらしい。

「はぁ。安心しろ、雅人。使用しても怒られはしない。競技場の使用の自由はSC4の特権の一つにあるだろうが」

忘れたのか、と翔太は溜息をついた。

「怒られないのが決まってんなら、絶対楽しいな! 由良がいるし!」

雅人はなぜかワクワクと目を輝かせている。


状況を理解してないのは、あたしだけ…?


「由良も行くわよね?」

両手を握られて微笑まれても、あたしの頭の中のはてなマークは消えてくれない。

「行くって、競技場に? っていうか、何の為にそんな場所へ?」

「何のためにって、戦うために決まってるでしょう?」

キョトンとした表情で美玲が言ったのだけど、ちょっと待って。

「た、戦う!?」

すると美玲は微笑んだ。

「何で!?」

「何でって、ストレス発散するのには、戦うことがいちばんでしょ!」

キラキラと目を輝かせる美玲。

雅人はニコニコわくわくしているし、翔太も微笑んでいる。

そんなに皆さん、ストレス溜まってるの?

「じゃあ、行きましょう!」

呆気に取られていたあたしは、ウキウキした美玲に手を取られて、

「"モーメント・ムーブ"!」

瞬間移動してしまった。