「で、置いてきぼりにされたんだけど、どういうことだと思う?って言ってたぞ」

その話を聞いて俺は少し安心していた。

良かった、彼氏とか作らなくて。

その後も何もなくて、本当に良かった。

告白した方がまともなヤツで良かった。

「ふーん。由良、天然炸裂だな」

「もう、告白した方が可哀想なくらいにな」

俺は頷いた。

「多分あいつ、告白されたなんてて思ってないよな?告白したヤツ、可哀想に」

「話からして、ソレワソさんの絵画展に誘われかけたけど結局なくなったとしか認識してないだろうからな。本当に不憫だよな!涙がでてくるっつーの」

「誰だよ、ソレワソさんて…」

笑うというよりは、もう、呆れていた。その脳の発想の自由さに。

「そんな名前の画家なんて…」

いるわけないのに。

そう言おうとして、俺はハッとした。

待てよ、確か…

俺は青ざめるのが分かった。


「お、おい、どうした…?」

雅人も焦りだした。

「"トランスポート"」

俺は魔法で寮の自室から魔法全集第二巻を取り寄せた。

「すっげ…これがあの…」

「魔法全集な」

そして俺はページをめくっていた。

そしてあるページのところで手を止めた。

「お、おい、これはまさか…」

「そうだ。やっぱりな」

俺は溜息を吐き、雅人は目を見開いていた。


魔法全集第二巻723頁にそれは記載されていた。


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ソレワソ

魔物退治屋ルビー・スピネルの初代お抱え画家。写実的なソレワソ派を代表する画家でもある。
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「まじで存在してたのかよ!?」

人気のない放課後の教室に、雅人の叫び声が響いた。



              fin.