今日はなぜか、隣の由良のテンションが高い。凄く幸せそうな笑顔を浮かべている。

その笑顔はなんていうかその、とても可愛いくてクラス中の男共が見入っている。俺だって例外ではないし、雅人だってそうだ。

「お前、顔がキモイ。何ニヤニヤしてんだ」

俺がそう言ってみると、

「なっ!?キモくないもん、普通だもん!」

顔をこちらに向けて怒られた。

「バカ翔太!」

お前な、顔を真っ赤にして睨むのは反則だろうが。

「バカはどっちだ」

無意識に人をドキドキさせるなんて。

コイツの場合、それを故意でやっているわけじゃない。小悪魔と言うよりは天使に近い。由良は、純粋すぎるのだ。

けれどこれを無意識でやってくるんだから困りものだ。無意識な小悪魔。あぁ、厄介なヤツ。

「あたしがバカだと言いたいの!?」

俺に反論してきた由良に、

「それ以外にないだろ」

そっけなく答えてやると、

「あたしはバカじゃないもん!翔太より頭いいもん!」

そう言われてしまった。

確かにテストなんかにおいては由良の方が点数は良い。けれど、

「すぐ迷子になるだろうが。この方向音痴」

「なっ!?」

方向音痴、と言われたらさすがに言い返せないだろう。よく迷子になっているのは事実だからな。

俺の勝ちが見えてきて、ふ、と上から目線で笑ってやると、

「ほ、方向音痴じゃないもん…!」

由良は真っ赤な顔で俺を睨みつけている。俺と由良では身長のこともあって、由良が見上げる形になっている。そう、上目づかいで俺を見つめているのだ。それも真っ赤な顔で。

あーもう、本当に。

「お前は馬鹿だ」

無意識のうちに、人をときめかせて、そして、

…虜にするんだから。