「ねぇ、汀さん」





卯花に後ろから声をかけられ、汀はくるりと振り返った。





「あら、卯花さん。どうかした?」





青空の下でにっこりと笑う勿忘草色の瞳に、思わず見惚れながら、卯花は言う。






「あのね、檀弓の提案なんだけど。


今日、女性陣で都の市(いち)まで出かけようって話してるのよ」





「まぁっ、市に?」






汀は目をまんまるに見開いた。





卯花は微笑んで頷く。






「そろそろ春らしくなってきたし、薄手の着物なんかも欲しいじゃない?」





「まぁ、いいわねぇ。


皆でお買い物に行くのね」






汀は手を合わせてうっとりしたように首を傾げた。




女友だちと気ままに買い物、などというのは、箱入り娘の汀にとっては夢のまた夢なのだ。






「あなたも行くでしょ? 汀さん」






その言葉に、汀は満面を輝かせる。





「えっ、いいの!?



私も一緒に行って!?」