*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

汀と栗野の息が合ってきたので、楪葉は少しだけ速度をはやめた。





「うわぁっ、早くなった、早くなった!


すごいわねぇ、栗野!!」





嬉しくなった汀は、大声で叫ぶ。




そして、上機嫌にまかせて、なんと、栗野の背中を思いっきり叩いてしまった。






「あっ!」




「おいっ!!」




「…………やっちゃった」






楪葉と灯、藤波が同時に声を上げる。




彼らが危惧したとおり、栗野は瞬時に後ろ脚で立ち上がり、そのまま疾走しはじめてしまった。







「………えっ!?



きゃぁぁぁーーーっ!!!」






あわや振り落とされかけたところで、汀は咄嗟に栗野の首に抱きついた。





なんとか体勢をととのえたものの、一度走り出した馬が容易に静まるはずもない。





「………嫌な予感、当たったね」





呆れたように言う藤波に返事もせず、灯は栗野の後を追い始めた。