*華月譚*花ノ章 青羽山の青瑞の姫

汀は案の定、灯の袖をくいくいと引いた。





「蘇芳丸! 馬に乗ってみたい!」





(………言うと思った)






灯はげんなりと肩を落とした。




いちおう、思いとどまらせようと試みる。





「………危ないから、やめておけ。


お前なんか、振り落とされるのが落ちだ」





「あらっ、やってみないと分からないじゃない」





「俺には分かるんだよ!」





「まぁ、そんなことばっかり言って、すぐ私のしようとすることを止めるんだから」





「俺は根本的にお前のことを信用していないからな」





「んまっ!」





「何をやらせても、問題を起こさなかったことがないだろう?」





「またまた、そんなこと言って」





「……………」





「とにかく、馬に乗るか包丁を使うか、どっちかは認めてちょうだい!」





「……………」





「あなたがどっちか許してくれないなら、勝手に両方やっちゃうわよ!」