桃の花を溺れるほどに愛してる

【春人 Side.】


 僕は桃花さんを深く深く愛している。これを大前提に結論を言ってしまうと、……気が付いていた。

 桃花さんは優しいから、桃花さんからフッたら僕が自殺をすることを分かっているから、桃花さんから別れを切り出せないでいることも……。

 だからこそ、僕が桃花さんを嫌いになり、僕から別れを切り出すようにと、たくさんの演技をして僕に冷たく接してくることも……。

 全部。

 全部、お見通しなんだ。

 ……僕は最低だ。桃花さんが優しいのを知っていて、それで僕のことを絶対にフレないことが分かっているから、僕はその優しさに付け込んで、この1ヶ月の間、それがたとえ仮や見せ掛けなのだとしても、ずっと恋人として付き合ってきた。

 上辺の形だけでも恋人としていたくて、桃花さんとは何かしらの繋がりがほしくて、僕は必死だった。必死……そう、ただ、必死だった。

 その結果、桃花さんの本当の気持ちを、僕のことを本当はどうとも思っていないという真実を、聞かないふりを、見ないふりをしてきた。

 それの罰が当たったのかな。桃花さんに、したくもない“嫌われる女”の演技をさせてしまうはめになったのは。

 どこか桃花さんとは上辺の恋人としてでもずっと一緒にいられると喜ぶ自分がいて……はは、馬鹿だなぁ、本当。そんなはず、無いのに。