桃の花を溺れるほどに愛してる

 壊れた人形のように淡々と話し続ける春人が苦しそうに、そして痛々しく見えて、見てはいられなくて、私は思わずそう叫んでいた。


「許すも何も……私は春人に対して怒っていないから。だから、そんなに自分を責めないで?それに……春人はこうやって駆け付けてくれたじゃん?だから、その……あっ、ありがと」


 なんかお礼の言葉を口にするのが恥ずかしくて、声が小さくなっちゃった。


「桃花さん……」


 春人は驚いたかのように目を見開いて私の名前を呟いたかと思うと、ふにゃっと表情を綻ばせた。


「お許し、ありがとうございます……本当に申し訳ございません……」

「だから、もういいって!それよりもほら、映画を観よう?――あっ、飲み物とか何か買う?」


 ナンパ騒ぎで忘れかけていたけど、飲み物とか何かつまめるものを買おうかを聞こうと思っていたんだっけ。

 独断で買うよりも、春人にちゃんと聞いて買いたかったし……。


「僕は……桃花さんと同じものでいいですよ。というより、桃花さんと同じものが飲みたいです」

「え、いいの?それじゃあ……」


 上の方に設置された店のメニューを順番に見ていき、最後に目にとまったメニューを思わず口に出していた。


「ミックス・オ・レ!」


 春人はふんわりと笑って、「はいっ!」と言った。