桃の花を溺れるほどに愛してる

「なっ……!かわいこちゃんをほったらかしにしている野郎に、とやかく言われたくねぇよっ!」


 一瞬、春人のピリピリとした冷たい雰囲気に圧倒されたのか、怯んだナンパの男性だったが、負けるわけにはいかないと食ってかかる。

 しかし、春人はそんなナンパの男性には一切動じない。無表情のままで3人を見下ろしたままだ。


「っ……!クソッ!んだよ、1人で寂しそうだから相手にしてやったのによ!」


 やがて、先に折れたナンパの3人の男性は、舌打ちをしてどこかへと去っていった……って、私、別に寂しそうにしていませんから!


「……」


 3人の姿が見えなくなるまでその背中を見つめていた春人だったが、私の呼びかけにハッとこちらを振り返る。

 無表情ではなく、眉を垂れ下げて申し訳なさそうな表情で、目にはちゃんと光が戻っていて……まるで犬のようなもとの春人が、そこにいた。


「あの、はる…」

「申し訳ございませんっ!」

「へ?」

「僕が桃花さんを1人にしたために、怖い目に遭わせてしまった……。桃花さんを怖い目に遭わせてしまった今、僕は自分に対して怒り狂っています。本当に申し訳ございませんっ!どうしたら、許してもらえますか?さっきの男性たちを懲らしめたら許してもらえますか?僕が自害したら許してもらえますか?僕が…」

「――もういいって!」