桃の花を溺れるほどに愛してる

「あ?なんだ?テメェ。俺らは今、このかわいこちゃんと遊びに行くっつー話をしてたの。テメェみたいな野郎には関係ねぇ」


 いやいやいやっ、誰もアンタたちと遊びに行くなんて言っていないし?!

 もしかして耳が悪いの?耳鼻科に案内しよっか?それともおめでたい頭をしているの?バカなの?


「聴こえていなかったようですね。僕は、『その手、はなしてください』って言ったんですよ。いいですか?彼女からはなれてくださいと言ったんです」


 春人はいつもと同じ敬語で話しているのに、春人が無表情だからか、声がすわっているからか……ゾクリとした何かが背中を駆け巡った。

 一言でそれを言い表すのなら――そう、“こわい”。

 今の春人……なんだか、こわい。さっきまでのまるで犬のような春人とは違って、まるで別人のよう。


「だいたい、テメェはこのかわいこちゃんのなんなんだよォ?無関係はあっちに行った!シッシッ」

「僕が――桃花さんの連れの者ですが?」


 ――ゾクゥ……ッ!

 今度は、言い表せない悪寒が背中を駆け巡っていった。

 光を宿していない、まるで“無機質”を連想させるような冷たい目。

 やっぱり……春人、怒っているんだ。私がタチの悪そうな3人の男性に絡まれているから……。