桃の花を溺れるほどに愛してる

「今、映画のチケットを買いに行っているんで。すぐに戻って来ると思いますよ?」

「でも、そんなにキミを待たせちゃうなんて、最低なお連れさんだねぇ?俺らならそんな最低なことはしないし、絶対に楽しいって!ほら、行こうぜ~」

「?!」


 3人がかりで私の腕を強引に引っ張ったり、肩を抱いたりして、どこかへと連れていこうとする。

 ニヤニヤとしている顔から何かいやらしいことを考えているのは明白だし、私は死んでもそんな気持ちの悪いこと、しませんからっ!断固、お断りっ!


「やめてください!触らないでください、はなしてください!」

「キミは今流行りのツンデレってヤツ?ホントは嫌じゃない・く・せ・に~」


 ――ぷつんっ。

 ブチ切れてもいいっすか?


 「ぁあん?ふざけんじゃねぇ!触るんじゃねぇよ、ブスの極みが!気持ち悪いったらありゃしねぇっ!」って、言おうと口を開いた瞬間――。


「その手、はなしてください」


 春人の声だった。

 反射的にそちらを向くと、春人は無表情でチャラチャラとした3人の男性を見下ろしていた。

 うわ、やっぱり春人の背、高い……じゃなくてっ、今の春人?!無表情だし、なんだか声もすわっているし……もしかして、怒っている……の?