桃の花を溺れるほどに愛してる

 なんか、気まずい……。やっぱり聞いちゃいけないことだったのかな……。

 私はこの気まずさを打開しようと行動すべく、運ばれてきたおそらく人気であろう料理を口に運ぶ。

 ――っ!

 このトースト、外はサクサクなのに中はもっちりしていて美味しい!

 しかも、デコレーションしてあるクリームやフルーツなんかと一緒に食べると、さらに美味しい!

 この喫茶・碧の森が雑誌に載るほどの人気だという理由が、分かったような気がした。


「春人!美味しいよ、これ!」


 突然の私の呼びかけに驚いたようだけど、私の言葉に押されるように料理を口にした春人は、目を見開いた。


「本当ですね……!美味しいですっ」


 先程までの気まずさは一変し、ほんわかとした優しい空気になった。

 よかった。あのまま気まずいままだったら、息苦しさで窒息死するかと思った。いや、しないけど。

 とにもかくにも、春人にも聞かれたくないことや答えづらいことがあるだろうし、無理に聞く必要はないよねっ!

 一応、気まずい雰囲気は打開できたみたいだし、しばらくの間はこの質問はしないでおこう。

 いつか、春人が自分から話してくれると信じて、待ってみよう。

 ……まぁ、それまでに別れたら別れたで、私は別に気にしないんだけどねっ。