桃の花を溺れるほどに愛してる

「春人は何を頼むの?」

「ん?ああ、僕もAセットにしようかなと思いまして」

「ふーん」


 もしかして、Aセットが1番美味しいメニューだったりして……?

 見たところ、普通のトーストのような気もしたけど……。


「すみませーん」


 私が店員さんを呼ぼうと声を出すと、春人はそんな私に制止をかけた。

 そして、私に向かって微笑みながら、小さくウインクをした。

 ……なっ、なにそれ。注文は僕が言います、任せてくださいっていうこと?


「ハイハーイ!今行きますよー★」


 うわっ、さっきのチャラ男こと司さんが注文をとりにきた……。出来れば桐生さんの方がよかっ……んんっ?!

 桐生さんの姿を探していたら、思いもよらぬ場面を見てしまった。

 桐生さんは、テーブルに腰掛ける1人の女性の側で、何やら親しげに……そして楽しそうに会話をしていた。

 アレが司さんの言っていた、桐生さんの噂の婚約者さん……なのかな?とても美人さんだけど。


「ん?どうしたの?かわうぃ~レディちゃん?」


 あっ。あまり春人の前でそういうことを言わない方が……ひぃ!春人、すっごく笑っているけど、どす黒いオーラがでているよっ?!