桃の花を溺れるほどに愛してる

「~~っ?!!」


 突然に春人に抱きしめられたものだから、私は口をパクパクと動かす以外に動くことが出来ない。それほどまでに突然で、それほどまでに驚いたから……。

 そんな様子を見た司さんは、「ふぅ~ん?」と意味ありげな笑みを浮かべる。


「なるほど!お客さんたち2人は付き合っているんっすね!そりゃあ彼氏さんに叱られるのも無理はないですな。はっはっは」


 司さんは豪快に笑いながら、隣にいる黒髪の店員さんの肩をバンバンと叩く。

 叩かれた黒髪の店員さんは無表情のままなんだけど……バンバンという音のわりに、そこまで痛くないのかな……?


「あっ、この人、イケメンっしょ?でもザンネ~ン!桐生センパイ、婚約者がいるから~!★」

「はぁ……」


 ……今、気付いたんだけど、この司さんっていう店員さん……見れば見るほど、チャラ男だなぁ。

 見た目も……髪を金色に染めてるし、なんか……ピアスつけてるし……偏見かもしれないけど、チャラ男をそのまま形にしたような……。

 黒髪の店員さん……桐生さん、だっけ?こっちの人はむしろチャラ男とは真逆で、誠実そうな人だなぁ。

 ……正直、結婚っていう言葉のわりに若い気もするけど、婚約者がいるっていうのには納得かも。