桃の花を溺れるほどに愛してる

「それじゃあ、次は――どこかで昼食をとりましょうか。確か映画館の近くに美味しいお店があったはず……」


 映画館の近くに美味しいお店……?なんだろう?和風?洋風?イタリアンとか……あっ、バイキングとかかも?

 おそらく行ったことのない店だと思うので、ちょっと期待に胸が膨らむ。

 車で数分かけて到着した店は、“碧の森”という名前の喫茶店のようだった。自然をモチーフにしているのか、草木をアレンジして店の壁に張り付けてあるのが、なかなかに魅力的でかわいらしい。


「……って、喫茶店?」


 正直、ファミリーレストランのようなところを想像していた節があったのだが、まぁ……喫茶店は喫茶店でアリだろう。

 一応、初めて来る店だし、どんな料理が運び出されてくるのかが楽しみだ。


「嫌でしたか?」

「嫌じゃないけど……予想外だった」

「ふふ。雑誌に載っていたこともあるようですし、きっとお気に召しますよ」


 雑誌に?!それはすごい……。かわいらしい喫茶店っぽいし、女の子に人気の店なのかも?

 春人の横に並びながら、一緒に店内へと足を踏み入れた――刹那だった、金色の髪をした男性の店員さんの顔がグググッと近付いてきた。

 あまりの近さに、私は一瞬、驚きのあまりに息をするのを忘れる。