桃の花を溺れるほどに愛してる

「まぁ……よいのですか?」


 店員さんは再び春人の方に向き直し、春人のその顔色を伺った。


「はい。僕が彼女に買ってあげたいんです。……桃花さんの喜ぶ顔を、誰よりも近くで見ていたいから」

「……っ」


 よくもまぁ、また歯の浮くような台詞を、そんなイケメンフェイスでぬけぬけと……!

 ほらっ、店員さんも赤面しちゃっているじゃん!恥ずかしいヤツだなぁ、もう!


「分かりました。では、すぐにお売り致します。中へ、どうぞ」


 店員さんに案内され、私達はアクセサリーショップの中へと足を踏み入れた。

 そして、一直線にモルガナイトのブレスレットの前へと移動してきた。


「包装致しますか?そのまま身につけていきますか?」

「そのままでお願いします」


 春人はモルガナイトのブレスレットの値段を見たけど、特に驚いた様子も見せず、店員さんと淡々とした様子で会話している。

 ……金持ちの人からすれば、3万円なんて安いも同然なんだろうなぁ。


「かしこまりました。3万円になります」

「はい」


 黒い革の財布を取り出した春人は、その中から3万円キッカリを抜き出し、店員さんに手渡した。


「お買い上げの方、ありがとうございます。こちらはアクセサリーの入れ物となっておりまして、袋にいれていただきますね」

「はい」


 シンプルなデザインの小さな袋を渡された。