桃の花を溺れるほどに愛してる

 院長ってことは……病院の長……だよね?病院で1番偉い人だよね?!

 春人がっ!病院のっ!長っ?!


「まぁ……正確には、“次期”院長なんですけどね。ほら、天霧総合病院って、聞いたことないですか?僕はそこの今の院長の息子なんです」


 いやいやいやっ、次期だろうがなんだろうが、院長ってことに変わりはないじゃんっ?!

 以前、確かに“天霧”という名字に聞き覚えはあるような気はしたけど、まさかそういうことだったとは……。

 春人がたくさんの監視カメラや盗聴器を所持していた理由が、今、明かされた。

 ――っていうか、いずれ院長になろうお方が、私のような平凡な女子にストーカー行為をしていていいのっ?!


「春人って、すごい人だったんだね」

「そんなっ、とんでもないです。僕なんてまだまだ未熟者で……」

「謙遜はナシ!すごい人に変わりはないんだからっ!」


 私がにこっと微笑むと、春人の頬がほんのりと赤くなった。


「はると……?」

「――っ!なっ、なんでもないです!みみみ、見ないでください……っ!」


 ……?

 よく分からないけど、なんか春人をからかうのって面白いな……。


「えー?見せてよー?」


 不覚にも春人がかわいいと思ってしまった自分がいて、赤面する春人を見て調子に乗った私は、春人の顔を見ようと身体を動かす。