桃の花を溺れるほどに愛してる

「えっ、でも……」

「構いませんから」


 春人にやわらかと催促され、私は渋々、さっきまでいたアクセサリーショップの場所を教えた。

 「了解です」とふんわりと笑った春人は、ハンドルをきりつつアクセサリーショップへと車を走らせた。


「ここですね」

「……うっ、うん」


 確認するように呟いた春人は、近くの駐車場に車を停め、表に出た。慌てて私も飛び出し、春人の後をついていく。

 なんとか追い付いたかと思いきや、春人は私のペースに合わせてか、歩くスピードを落とした。

 うっわぁ……!こうやって見てみると、やっぱり春人ってスラリとしていてカッコイイ……かも。

 なんか、モデルさんみたい。……ん?モデル?そういえば……。


「……そういえば、私って春人のこと、何も知らないや」

「えっ?」


 ふと頭を過ぎった疑問が、思わず口をついて出てしまっていたらしく、春人がこちらを見た。


「え……っ、と。春人って、お仕事、何やっているのかなぁ……って」


 春人から目をそらしながら、私は恐る恐るといった感じで問う。

 すると、春人はさらりと自分の職業を言いのけた。


「僕ですか?院長です」

「っ?!?!?!」


 一瞬、声が詰まった。