桃の花を溺れるほどに愛してる

 不意打ちを食らったせいか、顔が“カアァァァッ”……と熱くなるのを感じた。

 自分の心臓が、バクバクとうるさく鳴っているのが分かる。


「そういえば、桃花さん。そんなにかわいらしい格好をして、誰とどこに行っていたんですか?」

「へっ?」


 心なしか、春人の声音がいつもより低くなっているような気がして、思わずギョッとして春人の方を向いた。

 整った顔立ちは、真剣な表情を浮かべて前を向いて運転をしている。


「……誰と、って、私1人だけど?近くの洋服店とアクセサリーショップに行ってた」

「……そうですか」


 なっ、なに?もしかして、ヤキモチとかでもやいているの?

 私がこのワンピースを着ているのはオシャレっていうか、まぁ、たまたまだけど、決して誰かと会うためとかじゃないのに。

 ちらりと私の手元を見た春人は、再び真剣な表情を浮かべて前を向いた。


「そのアクセサリーショップ、どこですか?ちょっと今から向かいます」

「はぁ?!」


 なぜっ?!

 昼ご飯を食べてから映画館を見て、それで終わりじゃないのっ?!

 どうしていきなりアクセサリーショップに……?


「桃花さん。欲しいものがあるのなら、言ってください。僕が買います」


 えぇぇぇえええっ?!

 もしかして、私が手ぶらであることを見て、買いたいものが買えてないから手ぶらなんだ……とか、色々と考えてくれて……?