桃の花を溺れるほどに愛してる

 心の中でそう毒づくも、春人は依然としてにこやかと微笑んだままだ。


「待っていました、桃花さん」


 本当に待っていたの……?9時から?ずっと?ここで?ヒトリで?

 不審者扱いされて誰かに通報されていたかもしれないのに……今日1日、私は家に帰ってこないで遊び尽くしていたかもしれないのに?

 バカなの?


 ――でも、私がこうして声をかけることが最初から分かっていたから、声をかけることを信じていたから、ここでずっと待っていたのかもしれない……。


「……アンタってバカね」

「あはは、よく言われます」


 マジか。


「それで……早速なんですが、桃花さんがよければ、どこかに行きませんか?」


 昨日、「予定を空けとけ」って言っていたものね。やっぱり2人で遊びに行こうっていうことか。

 ……ん?
 これって、デート?


「どこかって、どこ?」

「えーっと、まずは映画館に行って、……あっ、まずは昼ご飯を食べましょうか!それから映画館に行って、その後に水族館に行って、動物園にも行って……」

「うん。却下」

「ええっ?!そんなぁ!」


 涙目になる春人。

 いや、いくらなんでも今日1日に色々と詰め込みすぎだろっ!