桃の花を溺れるほどに愛してる



 ――「ずっと待っていますから」


 春人の言葉が頭を過ぎる。

 いや……まさかね。まさか本当にずっと待っているっていうわけじゃ……ないよね?

 時間を確認したら、昼前だった。9時に勝手に約束を取り付けられていたものの、さすがにもう帰っちゃってるよね……?

 こうして連絡がないのは怒っちゃったからかもしれないけど……。

 こんな身勝手な女に嫌われたからって自分が死ぬのはおかしい!ってことに気が付いて、別れを切り出しても自殺しないようになってほしいなぁ……。

 お腹が空いたこともあり、私は自宅に戻ってきた。遠くから我が家が見えた――と思うや否や、我が家の前に赤い車が停まっているのが見えた。

 まだ1度しか見ていないけど、アレは間違いない……春人の車だ。

 まさか、本当に9時からずっと待っていたというのだろうか?

 恐る恐る近付き、春人が座っている運転席を覗き込むのと同時に、窓ガラスを軽く叩いてみた。

 それに気が付いた春人は、私の顔を見て嬉しそうに微笑む。

 ……なんで微笑んでいられるのよ?アンタが勝手に決めてきた約束とはいえ、私はそれをすっぽかしたんだよ?怒るぐらい、したらいいじゃないの……っ?!