桃の花を溺れるほどに愛してる

 しんっじられない!私の話、ちゃんと聞かずに決めちゃってさ!

 しかも9時に迎えに来るって言われたって……ちょこっと京子と遊ぶ約束を取り入れようと思っていたのに……。

 ……バックレちゃったら、ダメかな?

 だってもともとは、ちゃんと話を聞かずに勝手に決めた春人が悪いのであって、私は悪くない!はずだし。

 ……9時、かぁ。9時前に家を出て、京子の家に遊びに行こうかな……。あぁ、でも、彼氏クンといるかもしれないし……邪魔しちゃ悪いよねぇ。

 あっ、たまには適当に町をぶらぶらと散歩がてらに歩くのもいいかも。思わぬ掘り出し物があるかもしれないし……!

 そう決意した私は、京子の言っていた「グッジョブ!」なんて言葉を忘れ、まだ見ぬ掘り出し物に胸を踊らせながら家の中に入ったのだった。


「ただいま~」

「おかえり、桃花~。あら?今日はなんだかはやかったのね?」

「あ……っと、春人が送ってくれたから、かな?」

「あら~!わざわざ送ってくださったなんて……!今度お礼をしなくっちゃねぇ」

「いいよ!お礼なんて!」


 「そう?でも……」と納得のいかないお母さんを無視し、私は自室へと向かったのだった。