桃の花を溺れるほどに愛してる

「さっ、桃花さんの家につきましたよ。カバンを忘れずに持って帰ってくださいね。……まぁ、忘れたら忘れたらで不法侵入をしてまででも部屋に届けにいきま……」

「カバンは絶対に忘れないので、不法侵入してこないでくださいっ」


 話ながら車からおりた私は、言葉の語尾と共に車のドアを閉めた。


「送ってくれて、どうも」

「はい!……あっ、桃花さん!」

「なによ?」


 まだ何か用があるのかと、仕方なく振り返って運転席に座る春人に目を向ける。

 窓を開けた春人は、またニコニコと微笑んだ。


「明日、学校は休みですよね?」

「うん」


 そういえば、そうだった。明日は休みだった。何をしようかまだ決めていないなぁ、うーん、何をしようかなぁ……。


「その日、空けといてくれませんか?」

「へっ?!」


 いや、まぁ……まだ何も予定はないから、別にい……いいわけないっ!コヤツッ、何を企んでいる?!


「朝の9時に迎えにきますので、それまで自宅で待っていてください」

「えっ、そんな、急に……」

「ずっと待っていますから」


 「それじゃあ、また」と微笑んだ春人は、車を発進させて帰っていった。