桃の花を溺れるほどに愛してる

「あ……ご、ごめっ……!」

「大丈夫ですよ、これくらい」


 平手打ちを食らわされた頬を撫でながら、春人はにこりと微笑んで見せた。

 なっ、なんでそんなに微笑んでいられるの?!だって、今のはどう考えたって、たとえ何があろうと先に手を出してしまった私の方が悪い……。


「恋人の実感ができればと思い、先にキスしようと近付いたのは僕の方なのですから、これは自業自得ですよ」

「でも……」

「それに、これくらい、折られた腕に比べたら、どうってことないですしね」

「折られ……?!」

「あっ。……いえ、なんでもありません。それよりも、ほら。桃花さんの家に近付いてきましたよ」


 春人……今、言葉を濁した?なんだろう?昔に腕を折るような事態を引き起こしてしまったのだろうか?

 さすがに今は治っているとは思うけど……平手打ちは……痛かったよね……?うう、反射的にとはいえ、人を叩いてしまったこと、反省しなくちゃ……。


「あの、春人……さっきは本当にごめん、なさい……」

「ですから、大丈夫ですって。桃花さんは心配性ですね」


 いや、心配性とかいう問題ではなく、叩いてしまった事実に謝っているのだけど……まぁ、いいか。