桃の花を溺れるほどに愛してる

「巻きづらいですか?」

「え」

「体格差とかありますから、こればっかりは仕方ないですよね……」

「うっ、うん!そう!体格差!体格差があってちょっと巻きづらいなぁ~、なんて。あはは……」

「前は僕がやりますので、包帯を前に渡してくれませんか?」

「うん。分かった」


 口が避けても、春人の身体に見惚れていたなんて言えないや……。

 傷口に当てた包帯を身体の右側から渡すと、反対側である左側から渡される。また傷口に当てるようにして右側から渡すと、左側から渡される。

 それを何度か繰り返すと、なんとか無事に包帯を巻くことが出来た。


「よし、出来た」

「バッチリですね!桃花さん、ありがとうございますっ」

「まっ、まぁね!やっぱり、傷口をそのままにしておくことは出来ないし。あっ、病院に搬送されたら、ちゃんとした手当てを受けるのよ?」

「え」


 ……なに、そのビックリしたような、残念そうな、よく分からない顔は?!ま、まさか……。


「せっかく桃花さんが手当てしてくれたのに……解くのがもったいないです」


 やっぱりか!そんな理由だと思ったよ!私の思った通りだよ!


「わがままを言わないの!治るのも治らなくなるでしょっ」


 ……私はお母さんかっ。

 春人はしゅんと肩を落としたけど、それを見てドキドキする私って一体……?これが母性本能っていうヤツ?あはは。まさかね。