桃の花を溺れるほどに愛してる

「ああっ、もう!どうしてあなたはそんなにも可愛らしいんですかっ!」

「……っ」

「桃花さんが記憶を取り戻したら、僕のことなんて忘れてしまうんじゃないかって……。記憶を取り戻したら、つらい思いをして、桃花さん自身が壊れてしまうんじゃないかって……怖くて……。それなのに、桃花さんの隣にいるのが僕なんかでいいんですか。僕なんか……っ」


 まだ話している最中の春人の唇に、自分の唇を押し当てる。ビックリして固まってしまっている春人を見て、思わず笑ってしまった。


「私は……!私は、春人がいいの。春人じゃなきゃ、イヤなの」

「……」

「春人は……イヤ?」

「嫌なわけ、ないじゃないですか」


 今度は春人の方から顔が近付いてきて、私はゆっくりと目をつむる。

 すると、柔らかい感触が唇に当たって――って、あれ?そういえば春人からキスされるのって初めてのような?

 嬉しいのだけれど、なんだか妙に恥ずかしくなって、慌てて唇を離そうとした瞬間、春人の右手が私の後頭部にそっと回される。


「んっ?!」


 触れては離れ、触れては離れ……啄むような春人の熱いキスに、私の思考回路は焼き切れていく。

 うっすらと目を開けると、大人の魅力というのだろうか?なんとも色っぽい瞳を浮かべている春人と、目が合った。