桃の花を溺れるほどに愛してる

「……春人がよければ、なんだけど、あの……これからも恋人として、その、よっ、よろしく、お願いします……っ!」


 いっ、言えた……!

 顔から火が出そうなくらい熱いし、声量が小さくなったりしてスマートじゃなくなったけど、なんとか伝えたいことは言えた!言い切れたよっ!

 春人は右手で顔を覆い隠し、私からは表情が伺えないようにすると、「はぁー……」と深い溜め息を吐いた。

 ……って、えっ?!もしかして、やっぱり春人に嫌われたっ?!

 「酷いことを言ってきたお前とはもう付き合えない」とか、「暴力を振るうお前には愛想がつきた」とか言われたら、どうしよう……。

 心臓がバクバクとうるさい私の視界に入ったのは、湯気が出るんじゃないかって心配になるくらい、真っ赤になっている春人の耳だった。

 ……え?真っ赤?


「どうして先に言っちゃうんですか」

「……えっ」

「男らしく、僕が先に言いたかったのに」


 それって、つまり……私と同じような言葉を言いたかったってことは……私は嫌われて、ない?自惚れちゃってもいいの……?

 嬉しくて思わず固まっていると、春人にグイッと腕を引っ張られ、大きな腕に力いっぱい抱かれる。


「桃花さん、可愛すぎる……」

「っ?!」


 耳元にかかる熱い吐息に、私の心臓はバクバクと鳴りっぱなしだ。