桃の花を溺れるほどに愛してる

「なんで……なんで『はい』って答えないんだよ!『はい』って答えればそれで済むのに、なんで『はい』って答えないの?!俺は桃花ちゃんを愛していて、本当はこんな叩くようなマネ、したくないんだよ!たった一言!たった一言、『はい』って言ってくれたら、それで……!」


 ……嘘をつく必要がない。「いいえ」と答える私は間違っていない。確信がある、ただそれだけのこと。

 だから私は、よっぽどのことがない限り、「はい」とは答えないだろう。

 それにしても、頬……叩かれすぎたせいか、感覚が麻痺しているような気がする。直接的に触って確かめられないけど、なんとなく、そんな気がする。


「榊先輩、」


 喋るなって言われたのに、勝手に喋ってしまったから、また叩かれるかなって思ったんだけど……意外にも榊先輩は、耳を傾けてくれた。


「どうして……。どうして、そこまで私に執着するんですか?」


 仮に私が榊先輩のことを好きになったのなら、その瞬間、榊先輩は私を捨てるようにフるはずだ。

 だって、そんな話を聴いてしまった以上、そうとしか思えない。

 どうせ、いつか捨てるようにフるのなら……私が賛同して榊先輩に「好きです」と告白する意味はなんなのだろう?