桃の花を溺れるほどに愛してる

 何も言わないでいると、また榊先輩に頬を叩かれた。


「返事は『はい』か『いいえ』。そう言ったよね?」

「……はい」

「じゃあ、答えて。ここでずっとふたりっきりって、最高にいいシチュエーションだよね?」

「……いいえ」


 ――パシンッ!


「『はい』、だろ?まったく、桃花ちゃんは素直じゃないんだから。いいシチュエーションだ·よ·ね?」

「……いいえっ」


 ――パァンッ!

 痛い……。頬がジンジンと熱くて、ヒリヒリと痛む。でも、「はい」なんて返事、死んでもしたくない……っ!


「『はい』って答えるまでやめないから。『はい』って答えるまで、何度でも聞くからね。いいシチュエーションだろ?」

「いいえっ」


 ――パシンッ!


「いいシチュエーションだろ?」

「いい、え」


 ――パァンッ!


「いいシチュエーションだろ?」

「い、いえ……!」


 ――パシンッ!

 彼は……本当に私が「はい」って答えるまで、これを永遠に繰り返すのだろうか。

 ははは……私の頬、ものすごく腫れ上がっているだろうなぁ。さぞかし醜い顔をしているんだろうなぁ。

 そんな醜い顔、誰にも見せられないや……。


「……いい加減にしろよ」

「……っ?」


 また同じ質問が投げ掛けると思っていただけに、違う言葉を投げ掛けられたことに、自分の耳を疑った。