桃の花を溺れるほどに愛してる

 じとーっと私を見下ろす榊先輩。


「……反抗的なその目は、いただけないなぁ。もっとお仕置きが必要なのかなぁ?それとも、桃花ちゃんの家族や天霧春人を殺したら大人しくなるのかなぁ?」

「?!」


 私のお母さんやお父さん、春人までもを殺す……?!この人は自分が何を言っているのか分かっているの?!

 血の気がひいていくのを感じ取った時、榊先輩はにこっと笑った。


「なんてね!さすがにそこまではしないよ。――“俺は”、ね」


 ……それって、榊先輩以外の人が殺すっていうこと?つまり、榊先輩には仲間がいるっていうこと?

 仮に、運よく私がここから逃げ出せても、他の仲間が私を捕える可能性があるっていうことなのかな。

 どんな人が榊先輩の仲間なのか分からない以上、ここから逃げ出そうなんていう考えは止しておいた方がいいのかもしれない。

 もし、その榊先輩の仲間が20歳以上の人だったなら、車を運転することだって可能なわけで……私をここに運び込んで来ることは、容易いことだろう。


「言っておくけど、桃花ちゃんが俺のモノになるまで、ずっとこのままだからね?ずーっと、ここで暮らすことになるからね?あっ、でも、それもいいなぁ。俺と君のふたりっきり……最高にいいシチュエーションだと思わない?」


 榊先輩は、不気味に笑う。