桃の花を溺れるほどに愛してる

 これは……私が榊先輩に告白しないといけない流れなんだろうか?

 好きでもなんでもない……いや、今回の行動によって恐怖の対象でしかなくなった榊先輩に、嘘でも告白をしないといけない流れなんだろうか?

 かといって、嘘の告白をするのもどうかと思うんだけど……。嘘だとバレた時の仕打ちとか怖いし……。


「さあ!桃花ちゃんからの告白、ちゃんと口から聴かせて……?」


 両手を広げ、ニコニコと微笑んでいる榊先輩に向かって、私はゆっくりと口を開いた。


「私、嫌いです」

「だよね!あんな天霧春人なんて異常者、嫌いになって当然――」

「――榊先輩のこと、嫌いです」


 正確には、今回の件で嫌いになったんだけど……。

 やっぱり、榊先輩のことを好きでもなんでもないのに告白するなんて出来ないし……そもそも、私は春人のことが好きだから、榊先輩に告白する義理なんてないわけだし。

 嘘をついてまで榊先輩に告白するとか、私にはデメリットしかなくて、榊先輩に告白しなくちゃいけない意味が分からない。

 榊先輩は春人のことを異常者だって連呼しているけど……確かに、そうだったのかもしれないけど、今の私にとったら、今この状況を作り出している榊先輩の方が異常者だよ……!

 榊先輩は人の良さそうな微笑みから一辺、怖い表情を浮かべて私を睨みつけた。