桃の花を溺れるほどに愛してる

「はいっ。連絡がきたら仕事を放棄してでも助けになりますっ!」

「いや、それは放棄したらダメだから」


 そんな会話を繰り広げながら、私は春人に自宅まで送ってもらった。

 榊先輩の元カノである雪子ちゃんは捨てられるようにフラれ、榊先輩がまるで女の子をオモチャのようにしか見ていないこと……そして、振り向かせたい女の子がいることが判明したわけだけど。

 それが私……じゃない女の子なら、その子に一言、忠告しておきたいな。榊先輩はこんな人だよって。

 でも、ファンの多い榊先輩のことだし、こんなことを言ったところで榊先輩にフラれた女の子たち以外の誰にも信じてもらえないだろう。

 かわいそうだけど、ここは忠告しない方がいいのかな……表向きで人望があるのは間違いなく榊先輩の方だろうし。

 晩御飯と宿題を済ませ、お風呂に入った私は、ベッドの上に沈み込むようにして横になった。

 そして、いつの間にか、私は夢の中へと堕ちていった。


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 次の日も、いつもと同じように学校まで春人に送ってもらい、京子と笑顔の絶えない学校生活を過ごした。