桃の花を溺れるほどに愛してる

「……やっぱり、桃花さんは優しいですね」


 一体何と勘違いしているのか、春人は苦笑いを浮かべる。


「分かりました。僕はもう、関わらないでほしいなんて言いません。自分の勝手で誰かの行動を束縛しちゃったら……ダメですよね」

「えっ、あの、」

「ただ、彼には十分に気をつけてください。何かあってからでは遅いんですから……。あっ、それから、少しでも何かあったら僕に連絡してくださいね」


 ……結局、私が榊先輩のあとをつけて様子を探っていたことは言えなかったけど、関わるなっていう許可はおりた、らしい。

 私から絶縁しようと言った辺り、よっぽどのことがなければ直接話したりすることはないと思うけど……。

 でも、関わるななんて生きていく上で難しいことを言われて、逆に意識しちゃって苦しかったけど、ちょっと気が楽になったかな?春人がそう言ってくれてよかった。


「分かった。何かあったら、真っ先に春人に連絡する」


 これは嘘じゃない。

 相手は榊先輩……仮にも男のわけだし、私はもちろん、京子にだって両親にだってどうにもならないことが起こるかもしれない。

 だからといって春人に頼るのもどうかとか言われそうだけど、私は生憎ながら交遊関係がそこまで広くないわけで……仕方ない。