しばらく聞く耳を立てていたけど、決定的な発言をとらえることは出来ず、最終的にはモヤモヤするはめになった。


「そろそろ帰るか!」

「そうだな。学校にいると、壬はまた誰かに呼び出されるかもしれねーしな」


 げっ。もしかして、教室から出てくる?!はやく立ち去った方が――。


「――ところでさぁ、」


 ……っ?!


「廊下で俺らの話を盗み聞きしてるヤツ、だれ?でてこいよ」


 ええーっ?!
 私のこと、バレてる?!

 ここは素直に姿を見せた方がいいのかな?それとも、急いで逃げる?

 どうしようかと頭の中が真っ白になっていると、私のすぐ近くの物陰から1人の女子生徒が立ち上がった。

 ……えっ?私以外にも盗み聞き……って言ったら言葉が悪いけど、それをしていた人、いたんだ。

 ショートカットの黒髪で、背も小さくて、お人形さんみたいな子。

 ちらりと顔色を伺ってみると、今にも泣きそうな表情を浮かべていた。


「なんだ。誰かと思ったら雪子か」


 ……雪子、ちゃん?

 雪子ちゃんって確か、かつて榊先輩と付き合っていた女の子?

 ……過去の私は、榊先輩と雪子ちゃんが付き合っているのを知ったから、自分の恋心を封じ込めて諦めた……んだよね、確か。