京子の様子がおかしいっていう発言のことも気になるし、ちょっとだけ見に行ってみようかな。

 ほんのちょこっとだけ。どういうふうに様子がおかしいのか……その原因が私なのか、確かめたい。

 私が原因じゃないならひとまず安心だし、私が原因なら……だれかにどうしたらいいのかを相談してみよう。

 相談せずに、私1人ででしゃばったところで、余計に榊先輩を傷付けてしまうかもしれないから……。

 榊先輩に気付かれないように、そっと後をつけていく。

 榊先輩は部活に入っていなかった……と思うから、普通だと門を出て家に直行……の、はず。

 ――しかし、榊先輩は階段をのぼっていった。

 ……あれ?榊先輩って何か部活に入ったのかな?それとも、先生に用事を頼まれていたからとか?あっ、教室に荷物を取りに行くのかも?

 色んな思考を巡らせながらあとをつけると、榊先輩は1つの教室に入っていった。

 ……ここ、榊先輩の教室だ。


「なんだったの?話」

「どうせまた告白だろ?」

「ああ。またフッたのか」


 わざわざ耳をたてて話を聞かなくても、教室の中から数人の男子生徒の大きな声が聴こえる。


「罪な男だなぁ、壬は」


 壬……って、榊先輩のことだよね。

 榊先輩、ついさっき、だれかに呼び出されて告白された……んだ。