桃の花を溺れるほどに愛してる

「なっ……なんでまた、アンタの顔は赤くなっているのよっ?!」

「えっ!そっ、それは……!桃花さんが……わい……からです……」

「えっ?」

「とっ、桃花さんが、かわいいからです……っ!」

「ハァッ?!ばかじゃないのっ?!」


 また自分の頬が、一段と熱くなったような気がする。


「それを言うなら、春人だって……!かっ、かわいい……しっ」

「えっ?!」

「……」

「……」


 そして訪れる、沈黙。

 私達のお互いの顔は林檎みたいに真っ赤で、触れると火傷しそうなくらいに熱くなっているような気がした。

 お互いがお互い、相手の顔が見れなくなっちゃって、なんとも気まずいような変な時間が流れる。

 何か言わないといけないのは分かっているのだが、何を話せばいいのかさっぱり分からない。

 そんな空気を読んでか読まずか、突如、私の携帯の着信が鳴り響く。

 恐る恐る携帯電話の画面を見ると、お母さんからの電話だった。


「おっ、お母さん?なにっ?」

「晩ご飯の用意が出来たんだけど、よかったらお友達も一緒に食べていかないかなぁって思ったんだけれど……」


 お母さんの言う“お友達”とは、おそらく聖くんのことだろう。

 その友達ならもうそばにいない、家に帰ったと伝えると、お母さんの残念そうな言葉が聞こえた。