桃の花を溺れるほどに愛してる

「どうか、こんな僕を嫌わないでください……」


 口をパクパクとさせて、何も言えないでいる私だったけど、春人のその言葉を聞いた途端、頭がスッと冷静になるのが分かった。

 春人は……怖いんだよね、私に嫌われることが。だって、私も怖い。春人に嫌われるだなんて、考えたくもないよ。

 私と出会うまでは……私をストーカーしていた時は、今ほどにそうは思わなかったのかもしれないけど……。

 春人と出会って、私も春人のことを好きになって、両想いになって恋人になれた今……“嫌われたくない”っていう気持ちが倍増して、心の中でグルグルと渦巻いている。


「春人……」


 春人は私より背が高くて、私より年上で、私より大人で、私より……。

 どうしてだろう。

 私の肩に顔を押し付けながら、そう悲願する彼が、小さく見えた。

 どこか冷静な頭は、言葉だけじゃ、今の状況が何も打破できないと考えたのだろうか……?

 私は何かしらの言葉を紡ぐより先に、行動していた。

 春人の顔が見たくて、両手で春人の顔が見えるように少しだけ遠ざける。

 悲しそうに、そして苦しそうに眉を寄せる春人の唇に、私はそっと自分の唇を押し付けていた……。


「……んっ?!」


 閉じていた目を少しだけ開けてみると、春人の両目が驚きで見開いているのが見えた。