桃の花を溺れるほどに愛してる

「ちなみに、さっきの兄貴の夜遊びしてないっていうの、嘘な」

「え?」

「昔はすっげー荒れてたの。毎日毎日遊びまくり。でも、里桜さんと出会ってから落ち着いたっていうか、昔ほどに夜遊びはしなくなったかな」

「そうなんだ」


 やっぱり篠原さんって、すごい人かも……。


「あっ、ちなみに里桜さんってさっきの人な?桐生さんの婚約者」

「うん。前に来た時に司さんから聞いたよ。ね?春人」

「……えっ?……あっ、はい」


 ……?

 春人、やっぱり様子がおかしいような……?

 春人のいつもと違う様子に戸惑いながらも、私達はケーキを食べながら、2時間くらいは話し込んでいた。

 途中、お母さんにメールで帰りが少し遅くなることを伝えたから、そこまで心配はしていないはず……。

 店から出る頃には、夕方だった外はすっかり日が暮れ、真っ暗になっていた。


「俺は兄貴と一緒に帰るんで、俺のことは気にせずに帰っちゃってください」


 聖くんがそう言うので、お会計を済ませた私と春人は一緒に店を出る。

 停めてある春人の車に向かって歩いていると、突然背後から手首を掴まれた。


「えっ?!」


 驚いて反射的に見てみると、春人が私の手首を掴んでいた。

 ……のだけど、辺りが暗いせいか、春人の表情は伺えない。