桃の花を溺れるほどに愛してる

「迷惑をかけちゃってごめんなさいねっ?では、ごゆっくりとお過ごしください」


 篠原さんはにこりと私と春人に向けて微笑んだあと、もとの場所へと戻っていった。


「……里桜に免じて今回は何も言わないでおくが、今度同じ過ちをしたら覚悟しておけよ……?」


 桐生さんはギロリと睨んで司さんと聖くんに向かってそう言ったあと、篠原さんの後を追った。

 桐生さん、篠原さんのことを本当に心の底から愛しているんだなぁ……と、しみじみ実感した。


「桐生センパイ、やっぱり怖ぇなぁ……。――まっ、そういうわけだから!俺は仕事に戻るけど、聖は夜遊びせずに、食べたらちゃんと家に帰るようにっ!」

「バカ兄貴じゃないんだから、夜遊びなんかしないっての」

「ハァ?!俺だって夜遊びなんてしたこと……!」

「あー、はいはい。してませんね。兄貴ははやく仕事に戻ってください」


 まくし立てるように司さんを追い払った聖くんは、椅子に座ってから大きくて長い溜め息を吐いた。


「……仲、悪いの?」

「んー、どうなんだろ。俺はあんなバカ兄貴だけど、嫌いじゃないんだよな」

「……そっか」


 私、一人っ子だから、なんて言ってあげたらいいのか分からない……。