桃の花を溺れるほどに愛してる

 ちゃんとシートベルトを締めると、春人は車を発進させ、学校に向けて走らせていく。

 また、以前と同じような送り迎えが始まるんだろうけど、今回から違うのは……。


「……」

「……」


 ……私達が、ちゃんとした“恋人同士”ということだ。


「……」

「……」


 ハッ!さっきから無言が続いているじゃないか!何か会話……会話をしないと気まずい……んっ?

 ふと、運転している春人の横顔に目を向ける。

 ……どうしよう。真剣な表情を浮かべて運転している春人の様が、とてもかっこよすぎる……っ!

 って、アレ?心なしか、春人の顔がほんのりとピンク色のような気が?


「春人。風邪?顔が赤いけど……」

「えっ?えっ、あっ、これは、そのっ……暑いなぁ、なんて。あはは……」

「……?」


 確かに夏が近付いてきているけど、そこまで暑くないんだけど……。

 何か様子が変だと確信した私は、じぃーっと春人の横顔を見つめてみた。


「……」


 おお、さらに頬が赤くなった。なんか、かわいい……かも。


「……っ」


 あっ、今度は目が泳ぎ始めた。なんだか挙動不審みたいになっている。


「とっ、桃花さん……っ!」

「えっ。なに?」

「そんなに見つめたら、その……っ、はっ、恥ずかしいじゃないですかっ」


 うわ。なにそれ。フツーにかわいいんですけど。


「見られるの、イヤ?」

「あっ、いえ!決してイヤっていうわけでは……っ!!!……ほら、あの、桃花さんと恋人同士になったんだ……って、実感が湧かなくて、緊張……していたんです」


 なるほど、顔が赤くなったり挙動不審みたいな行動はそれかっ。

 って、私のせい?