桃の花を溺れるほどに愛してる

「先程、桃花さんは『先輩に告白されて』……とおっしゃっていましたが、それはどういう輩ですか?」


 あっ……ああ、榊先輩のことか。

 私が中学1年生の時に好きだった……だけど、どうやって失恋から立ち直ったのか覚えていない、榊先輩のこと……。

 春人は以前、嫉妬で狂い死にそうとか言っていたけれど、また榊先輩の名前を出してもいいのだろうか……?


「えっと……榊先輩、なんだけど」


 春人の眉毛が、ピクリと動いた。

 もしかしなくても、怒っているのかな……。


「でもでもっ、私はその告白は丁重にお断りして、友達として仲良くしていこうって……」

「――桃花さん」

「はいっ……?」


 春人の周りに渦巻くオーラがまがまがしく見えて、私の心臓は無意識のうちに高鳴っていく。


「今後、その榊という人とは、一切関わらないでください」

「え……」


 これは……嫉妬?

 いや、嫉妬と似ているようだけど、なんか違うような気がする。

 なんだろう……?
 この胸のもやもやは。


「春人、どうして……?」

「……何がなんでも、です。こんなわがままを言ってしまって、すみません。とにもかくにも、榊という人とは関わらないでください」

「う、ん……」


 よく分からないけれど、こんなに切羽詰まる春人を見るのは初めてだ。

 よっぽど榊先輩と関わってほしくないのかな……。