桃の花を溺れるほどに愛してる

「あの、春人……?」

「これは、天国でしょうか」

「……え?」

「これは、まだ夢の中なんでしょうか。だって、こんな……こんなこと……嬉しすぎて、予想だにしなかった出来事で、僕はどうしたらいいのか分からないです……」


 私は思わず笑っていた。


「天国でも夢の中でもないよ。これは、現実。私、ちゃんと実在しているよ?」


 春人の手をとり、私の頬に触れさせる。


「……ね?」

「……はいっ」


 春人も、泣きながらも笑っていた。嬉しそうに。本当に、嬉しそうに。

 しばらくの間、ちゃんとした恋人としての余韻を楽しんでいた。


「僕は、たとえ何があっても、桃花さんを嫌いにはなりません。桃花さんのことはぜんぶ丸分かりなんですし」

「……なんか、それちょっとヤダ」

「えっ」


 何があっても私を嫌いにはなりません……なんて、どこからそんな自信が沸いて来るのかは分からないけれど。


「私のこと、ぜんぶ丸分かりって……なんか恥ずかしいじゃん」

「桃花さん……。ふふふっ、恥ずかしがり屋な桃花さんもかわいいですよっ」

「かわいいとかかわいくないとか、そういう問題じゃなーいっ!」

「あははっ」


 まったくもう……!