桃の花を溺れるほどに愛してる

「私、最初はアンタのこと……どうとも思っていなかった。むしろ、ストーカーと付き合うことになるなんて、今までの人生で1番最悪だーって、思っていた。

でも、アンタには死んでほしくないと思ったから、だから、仕方なく恋人として付き合った。

そのうち、私からフッたら死んじゃうっていうことなら、私が嫌われてフラれる立場になればいいって思い付いたんだ。

そして、アンタに距離を置こうって言われた時、胸が酷く痛んだ。理由は……今ならよく分かる。

夏美さんと一緒にいる現場を見て勘違いしたり、先輩に告白されてグルグルして……それで、分かったの」


 私は1度だけ深呼吸をしてから、しっかりと春人の目を見て言った。


「私、春人のことが好き」

「……っ」

「春人の話を聞かずに嫌いなんて言って、ごめんなさい。その言葉が、その言葉の意味が、春人にとってどんな言葉よりも恐ろしいことなのか……分かっていたはずなのに……本当にごめんなさい……!」

「っ……」

「こんな私でよければ……春人の隣にいても、いいですか?」


 春人は、泣いていた。

 私が好きだと言った瞬間から、春人は両目から涙を溢れさせた。